濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』

今年のカンヌといえば、調子に乗った還暦のカラックスが小汚い出立ちで所構わずタバコを吸っているところを(映画作家のテンプレ的姿として)マスコミにフィーチャーされ、大衆のオモチャになっている様を見せつけられたことまでは記憶している。自分のヒーロ…

アピチャッポン・ウィーラセタクン『世紀の光』について

久しぶりに映画を見た。リハビリでお気楽なアクション映画でも見ようかと思っていたのだけれど、何故か抗えない意志の力によって手にとってしまったのはアピチャッポンだったので、これまた久しぶりに記事を書いた。ちなみに僕がアピチャッポン映画を見るの…

コロナ時代の職業選択

コロナ禍で、人々の仕事に対する見方は大きく変わる、いや既に変わりはじめている。具体的には、人々が仕事を強度や安定度といったまなざしで見るような傾向が強くなる。これは、言うならば人々が今後職業のデュー・ディリジェンスなるものに少しは注意を払…

UPLINK潰せばいいんじゃないですか?

今泉力哉監督がツイッターで「アップリンク、俺は今後も行きますよ。アップリンクをよくしたくて声をあげたわけだと思うので。」とツイートされてた。僕は個人的にアップリンクは潰れてもいいと思ってる。というか、アップリンクは今の映画文化空間のキツす…

ボビー・オロゴン逮捕―妻の独白―とカサヴェテスの諸監督作品は完全に繋がっちゃってるんだよね、って話。

これは『オープニング・ナイト』を見ていて、カサヴェテスがリハーサルでジーナ・ローランズをぶん殴ってから「触っただけだ」と言ってのけたあたりに閃いたことだけど、カサヴェテスの作品群を貫く主題はボビー・オロゴンの逮捕時の妻の告白(URL記事参照)…

テオ・アンゲロプロスについて

・「長回し」について アンゲロプロスの長回しは恐ろしく長い。カメラワークは例えば屋内においては柱などお構いなしに対象の運動を追い、空間をぶった切る。『旅芸人の記録』などでは空間を横断しつつ時間をも横断することがあり、とにかくダイナミックなカ…

ルドン展についてのメモ

2月8日から、三菱一号館美術館でルドン展をやっている。三菱一号館美術館というのは良いところで煉瓦造りの建物と、落ち着いた雰囲気、加えてミュージアムショップで扱っているギフトが良く出来ている。始まったばかりの特別展でも人は多くならないし客層も…

『北斎とジャポニズム』『ゴッホ展』、西美と都美の企画展について

国立西洋美術館と東京都美術館の企画展を一日かけて見てきた。とにかくどちらも人が多くてうんざりしてしまったが、今日は三連休の初日であるし仕方がない。こんな日に何も考えず上野に来てしまった自分が間抜けなのだ。 北斎とジャポニズム とにかく展示が…

シルクロードの玄関先、西安・敦煌までの旅

・はじめに 当初の計画では、この夏は成都を起点に西や南に足を延ばして少数民族の文化に触れようと思っていた。けれども出発直前に九塞溝の地震があり、計画は白紙に。チケットを北京行に急遽変更し、計画を練り直すことを余儀なくされた。北京行のチケット…

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス

そもそも、政治経済学部にいてはこんな質問誰からもされないのだけれど(政治経済学部に籍を置いている人間の殆どは無教養[無関心]なので)、一番好きな画家は誰かと聞かれたらウォーターハウスと答えるようにしようと常日頃から思っている。ウォーターハウス…

アンドレイ・タルコフスキーについて(アンゲロプロスを引き合いに出しつつ)

タルコフスキーの映画には『ローラーとバイオリン』『僕の村は戦場だった』『アンドレイ・ルブリョフ』『惑星ソラリス』『鏡』『ストーカー』『ノスタルジア』『サクリファイス』がある。映像の詩人は寡作であり、その作品のどれもが圧倒的な完成度を誇って…